その子にはお姉ちゃんがいました。
生まれてから何度も手術をし、入退院を繰り返していたその子は
もしかしたら半分以上病院だったかもしれません。
お姉ちゃんはそのたび、きっとたくさんのこと我慢していたのだと思います。
面会時間に一度、エレベーターの前で待っているお姉ちゃんを見かけたことがあります。
聡明そうな、しっかりした、素直なお嬢さんでした。
その日の面会の最後に、ママは枕元にカセットテープを置いていきました。
それはお姉ちゃんが本を朗読したテープでした。
まるでその場面が飛び出してきそうなほど、
声色を変えたり、抑揚をつけたり、きっと何度も練習したんだろうな。
お姉ちゃんは、妹に何かできないかなと自分で考えて、ママに渡したのだそうです。
9時のミルクのときに、そのお姉ちゃんのテープをかけました。
照明を落とした夜の赤ちゃん部屋で、お姉ちゃんの声が小さく響いていました。
その子はじっとテープの方をみて聞いていました。
12月25日がその子のお誕生日。
毎年クリスマスになると、その子が無事1つ年を重ねたかなと思います。 |