その日の夜は午後1時から9時までという勤務でした。
当時、入院患者さんの数やオペの時間によって通常の準夜帯の時間とは別に
こういう出勤時間もあったのです。
夜8時半すぎて段々こどもたちが眠りの準備に付き、
部屋を暗くして私はこどもたちに本を読んでいました。
9時を過ぎてもどうしても眠れなかったこどもが一人いました。
そのこのベッドの脇の椅子に座って少し読んだ後
時計はそろそろ帰らなくちゃいけない時間です。
廊下に出るときにそのこは
「けいこちゃん、かえらないで」と、か細い声で言いました。
こういうとき、普通のおうちだったら母親はこどものそばでもうちょっと過ごしているだろうに。
結局私は「もう時間だから、また今度ね」と病室を後にしました。
あの時、その子が眠れるまで読んであげれば良かった。
今も明かりの消えた部屋と小さな声が昨日のことのよう。 |